前回からの続きです

「2.アタッカーが前向きでキープしている状態」


アタッカーが前を向いた状態の場合、このときアプローチで詰める距離は、アタッカーがドリブルを開始する恐れもありますので、その際相手に背後を走り抜かれない距離までとします。相手のスピードが関わってくるため、試合の早い段階で相手のスピードを見極める必要があります。様子見の段階では、1mから2mくらいの距離でしょうか。

相手と対峙したときに大事なのは自分の姿勢と体の向きを作って、相手をどこに追い込みたいのか考えることです。(要するにボディシェイプとワンサイドカットです)。
何も意図を持たずに相手の正面に正対してしまうと、相手の進みたいほうに進まれ、こちらの体勢も崩されてしまいます。

1対1対峙3

まず、こちらの姿勢としては、
・片足を半歩ほど前に出して半身の姿勢をとる。
・体の重心を軽く下げる。
・足の裏の重心はつま先側に置く。

とします。

片足を前に出し重心を低く半身の姿勢をとることで、自分の背後へターンしたときに1歩目をすぐに踏み出せるようにするためです。アタッカーのドリブルなど、背後への動きにスムーズに対応しやすくなります。
足の裏の重心は、つま先側としていますが、かかと側のほうがターンしやすいという人もいます。どちらがが良いかは人それぞれだと思います。
ただ、走り出す際に地面を蹴るのは結局は足の指側ですので、重心はつま先側が良いような気がしています。

次に体の位置と向きです。
基本的な体の位置は、ボールとゴールを結ぶ線上です。それを前提とし、以下を加えて考えます。
チームコンセプト、もしくは場面ごとの守備連携により、サイドのエリアに追い込むのか、味方のいるほうへ追い込んで2vs1を作り出すのか、追い込みたい方向によって立ち位置を変更します。

サイドに追い込みたいときには、位置を定位置からやや右(左)にアプローチを掛けます。

サイドに追い込むポジショニング

例えば前線のプレスで味方FWが相手DFにアプローチをかける場合、ほぼ真横から追いかけることもありますね。岡崎選手なんかがよくやっているプレーです。

また、サイドにいて縦への突破を封じたいときは相手の前に立ちます。

縦をきるポジショニング

ここでキーとなるのは、後ろからの「味方からの声」です。
「縦切れ!」「右切れ!」こういった言葉を聞いたら、すぐにそのサイドを防ぐように位置を修正し、絶対にそのサイドを通されないようにしましょう。
また、自分が後ろにいる立場だったら、必ずどちらを切らせるのか声を掛けてあげましょう。味方DFも体は一つです。全方向のコースを一度に切ることは不可能ですので、
どちらの方向に行かせると一番危険なのか瞬時に判断し、連携して守るようにしましょう。

いずれにしても、ここで大事なのは、ドリブルさせたくない、パスを出させたくない方向への突破を絶対に許さないようにするため、その方向からアプローチし「コースを限定」することです。


「3.アタッカーがドリブルしている状態」

アタッカーがドリブルを開始した状態の場合、このときアプローチで詰める距離は、3~4mくらいでしょうか。こちらも相手のスピードにより間合いは変化します。
間合いを詰めたからといってその場に止まってはいけません。止まってしまうとドリブルをした相手には簡単に振り切られてしまいますからね。ある程度相手に近づいたら、バックステップで相手のスピードに合わせて下がる動きが必要となってきます。

こうすることの意味は相手のスピードを遅らせるためです。相手をいわゆる「ディレイ」させて、味方DFとの数的優位を作るための時間を作るためです。
「ディレイ」は文字通り相手の攻撃を遅らせることですから、相手のスピードに合わせてズルズル下がりっぱなしになってはいけません。味方のフォローが間に合ってないなら、サイドに追い込むように仕向けましょう。ゴールに直接向かわせないわけですから、十分遅らせることになります。
そして、味方のフォローが間に合ったなら、チャレンジ&カバーのチャレンジとして、アタッカーに対して向かっていきましょう。向かってボールか相手の体に当たれば確実にスピードを落とすことができます。

ドリブルサイドへの追い込み

大事なのはとにかく相手の前進を遅らせることです。

しかし、相手はドリブルをしているのでフェイントを仕掛けて、ゴール方向を目指してくることもあります。このとき大事なのは相手の体の動きにつられないことです。騙されて相手の体に釣られてしまうと、行かせたくないコースを空けてしまいますからね。ボールの動きを見て、ボールが動いたらそれに合わせて動くことが大事となってきます。

もちろんボールが奪えるときには、奪いに行きます。
アタッカーもDFに前に立たれた上でドリブルをしているわけですから、プレッシャーを感じています。ドリブルを大きく蹴りだしてしまうなどミスも出てくるでしょう。
または、ただ黙ってミスを待つのではなく、こちら側から足を出すフェイントや間合いを詰めるフェイントなど、たまに仕掛けてみてもいいかもしれません。ミスする可能性が大きくなります。

奪いに行く際の注意点ですが、どんなときでも何も考えずに飛び込んではいけません。ドリブルの幅が大きくなっても相手に先に触られては後ろを取られる可能性がありますから、ある程度のタイミングを計りましょう。
ボールを奪いに飛び出すのは、相手がボールを「足で突いた瞬間」です。
足で突いた直後が、次に相手がボールを触るまでの間隔が一番長くなるわけですから、
その「突いた瞬間」を狙うのです。

テレビなどでドリブルが上手い選手(メッシなど)に対して、ボール奪取に行くのが難しい、という解説や、選手の言葉を聞いたことはないでしょうか?
そういった選手は、ボールが足に吸い付いたように、小刻みにボールタッチを行っています。要するに、ボールを突く間隔が狭いために、ボールに飛び出すタイミングが見出すのが難しくなっているのです。

逆にドリブルがそれほど上手くない選手ですと、ボールタッチ数も少なくなり、ボールを触る間隔が長くなるわけですから、ボールをついた瞬間が狙いやすくなるのです。


このように、ドリブルをしている相手は、前を向いている状態のときよりも、相手側が有利なのですが、動いている分ミスする可能性も高くなります。
コースを限定しつつ前進を遅らせ、スキあらば奪い取るという心構えで臨みましょう。


「むかっていくこと!!そこに勝機あり。」

以上、1対1のアプローチについて説明しました。
相手のプレーを遅らせたい。サイドに追いやりたい、後ろに戻させたい。あわよくばボールを奪いたい。どのようにボールを奪いたいか色々あるとは思いますが、どんな守備でもまずは「向かっていくこと」が前提となります。

多くの日本人プレーヤーで、アプローチに行っても中途半端な距離で、あとはズルズル下がるようなプレーを良く見ます。結局バイタルエリアやペナルティエリアまで侵入されて、シュートを打たれています。ほぼ負けに等しいプレーですね。

海外に出たことのある日本人プレーヤーが以下のように言っているのを耳にしたことがあります。
「1対1での負けはあまり怒られないけど、勝負に向かっていかないと絶対に怒られる」ということです。
勝負に行けば勝ちの可能性も生まれますが、勝負に行かないと負けしかないですからね。

むかっていけ

このように経験者は語っていますが、守備でも攻撃でも相手に向かっていかなくては、状況を変化させることはできません。アプローチは相手の脅威になりますし、勝ちを手にするための手段です。確実に行いましょう。

今回はこの辺で。